2014年1月22日水曜日

マイケル・クライトン「大列車強盗」レビュー

 クーンツの読書マラソン、45冊目はマイケル・クライトン「大列車強盗 (ハヤカワ文庫 NV 256)」です。ネタバレを含みます。
大列車強盗 (ハヤカワ文庫 NV 256)
 作者のマイケル・クライトンは非常に多芸な人物です。ハーバード大学で医学博士号を取得し、その医学知識をふんだんに活用してバイオ・パニックSF「アンドロメダ病原体」を仕上げたかと思えば、映画「ジュラシック・パーク」の脚本でヒットを飛ばしたり。その腕前は歴史小説の本作でも発揮されています。
 話の筋は単純。ヴィクトリア朝のイギリスで悪党エドワード・ピアースが大胆な強盗計画を発案します。フランスとイギリスをつなぐ輸送列車から、クリミア戦争で闘う兵士たちの給料に充てられる金塊一万二千ポンドを盗みだそうというのです!
 しかし金塊を守る側も一筋縄ではいきません。当時最新鋭の防犯技術が施された金庫を破るために、同じく銀行のセキュリティで守られている四つの鍵を入手しなければならないのです。しかも列車の厳重な警備を掻い潜った上で!
 過去の経歴が一切謎の英国紳士ピアースは、金庫破りのエイガー・潜入の天才“すらり”のウィリー・貧困にあえぐ鉄道警備員バージェスたちを従えてこれに立ち向かいます。
 そこで光るのは登場人物たちの演技力。ある時は闘犬という共通の趣味から近づき、またある時はスリに化けて偽物の盗難事件をでっち上げ、鍵の番人である銀行家達を次々に籠絡していく様子はなんとも言えずワクワクします。
 仲間の賃上げ要求と裏切り、些細な事件からのセキュリティの変更などのアクシデントを乗り越えて彼らの努力は決行日に結実し、やがては“The Great Train Robbery”(大列車強盗)と呼ばれることになるのです。
(当時は何か大きな事が起こると何でも“Great”をつける時代ではあったそうですが)
 ネタバレにはなりますが、この本ではピアースとその仲間たちが逮捕されて裁判になるという結末が最初の段階で示唆されています。にも拘わらずこれらの悪漢たちと銀行・鉄道会社の攻防はスリリングさを全く失っていません。
 それを彩るヴィクトリア朝の風俗描写もまた魅力的です。激しい女性差別とそれを逆手に取る女達のたくましさ。公開処刑を娯楽として楽しむ庶民たち。ネズミを食い殺す血みどろの闘犬試合を貴賎様々な階級が入り混じって楽しむ様子など、1850年代のイギリスは興味を惹く題材には事欠きません。それだけの情報をこれでもか、これでもかと盛り込むわけですから読む側としては消化不良を起こしそうなものですが、マイケル・クライトンの手に掛かると全くそんな事はないのです。
 アメリカのホラー小説の大家、ディーン・クーンツも「ベストセラー小説の書き方」の中で次のように絶賛しています。
マイケル・クライトンの傑作『大列車強盗』は、大胆な列車強盗の計画から実行へと話が展開するなかに、ヴィクトリア朝のイギリスに関するおびただしい描写が、無理なく織りこまれている。バックグラウンドの材料がひとかたまりにならないように配慮するお手本として、彼の作品の一読を、ぜひすすめたい。
当代一の大犯罪を犯人の視点からドキュメンタリー・タッチで描写することで仕上げられた一流のクライム・サスペンス。結末は痛快です。
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