2014年2月5日水曜日

「NINJA SLAYER 殺〈ニンジャスレイヤー キルズ〉KILLs 002 ゼロ・トレランス・サンスイ」前半レビュー

 日本のネット・コミュニティを騒がせているサイバーパンクニンジャ活劇小説、ニンジャスレイヤー。エンターブレイン社を通して積極的に商業展開を行っており、昨年末にも、「アクメツ 」「真マジンガーZERO 」でお馴染みの余湖裕輝・田畑由秋コンビによる「マシン・オブ・ヴェンジェンス」や、ボーイズラブと少女漫画で活躍しているさおとめあげは先生の「グラマラス・キラーズ」に続く三番目のコミカライズを発表してファンの度肝を抜きました。それが現在「水曜日のシリウス」で連載中の「ニンジャスレイヤー キルズ」。
 漫画界ではベテランといえる余湖田畑コンビ・さおとめあげは先生と違い、関根光太郎先生は新人です。コミカライズが初の商業作品ということもあり、経験不足を心配する声もありました。しかし関根先生は今のところ、そうした心配は杞憂であると証明し続けています。この記事では「キルズ」がコミカライズとしていかに優れているかをレビューしていきたいと思います。
 第一話から最新話まではこちらから読めます。

原作のお約束を踏襲


  この画面を見た瞬間、しょっぱなからニヤニヤさせられてしまいました。ニンジャスレイヤーは短編を時系列ごと細切れにしてツイッターで連載するという形をとっているため、その日の更新分の最初は「これまでのあらすじ」から始まるのがお約束となっているのです。
 原作のツイートを見てみましょう。
実はこれ、ニンジャスレイヤーの公式アカウントができてから2つ目のツイートです。
 時系列カットアップ形式をとることで「連載第一回なのにあらすじから始まる」というアクロバットな試みから始まった原作ですが、コミカライズでは原作のお約束をしっかりと取り込んでいることが分かりますね。

 ここからは原作のネタバレになります。

原作の空白を上手に補完



 匍匐前進による移動というギミックのケレン味や崩れたフォントなど、この1ページだけでも見るべきものはたくさんありますが、ここでは原作と比較して気がついたことを指摘していきましょう。
 原作(日本語訳)のまとめはこちらから。

 原作通りに進むならこの後ミニットマンは死んだフリをすることでニンジャスレイヤーの手から逃れるわけですが、この情報からだけだと「ミニットマンはイクエイションを見捨ててニンジャスレイヤーをやり過ごしたのではないか?」という疑惑が拭えません。しかしコミカライズではイクエイションの死亡シーンを「不意を突かれての即死」と描写することで、あの時ミニットマンに取れる最善の手は死んだフリしかなかったということが即座に納得できる形で示されています。原作で説明がされなかった部分を上手に補完する。これも関根=センセイの手腕と言えるでしょう。
 さらに、写真を持つイクエイションのコマを挿入することで、「亡き家族の写真を奪われたニンジャスレイヤーが→それを取り返すべく二人組を追う」という主人公側の動機づけが分かりやすくなっています。たった一コマにこれだけの情報を詰め込めるのは、140文字以内にできるだけ多くの情報を分かりやすくつめ込む原作の簡潔な文体に通ずるものがあります。
 また、「つまらんな」と仇討ちを軽視していたイクエイションが仇討ちで死亡した結果、その相棒たるミニットマンがさらなる仇討ちに動き出す、という皮肉な効果を与えています。これもまた原作にはない要素です。
 単に展開をなぞるだけでなく、物語の雰囲気に合ったアレンジを加える。それはコミカライズ担当の確かな構成力と、それを支える画力がなければできません。
 翻訳チームによる事前のアナウンスからも、こうしたアレンジメントは周到な計算あってのものということが推し量れます。
 翻訳チームの周到さとアレンジ者の技量の幸せな融合。「ニンジャスレイヤー キルズ」、これからも期待大です。

 「ゼロ・トレラント・サンスイ」はYoutubeの公式アカウントからサウンドドラマを聴くことができます。これもまたミニットマンとイクエイションのエピソードが補完されています。
 
 
 原作の該当エピソード、書籍版の購入はこちらから。
ニンジャスレイヤー ネオサイタマ炎上1
ブラッドレー・ボンド フィリップ・N・モーゼズ
エンターブレイン
売り上げランキング: 2,553

0 件のコメント:

コメントを投稿